Feature

朝食、昼食、夕食


コロナの期間のロンドンのスープキッチン

Words by Laura Price
Images by Anna Cornish
Read in English
Japanese Translation by Emiko Anayama
多くの人は、「朝食は一日の始まり」、「昼食は一日の中間地点」、「夕食は一日の終わり」と考えるでしょう。

食事は、一日に区切りを付けるためだけではなく、タスクをこなすための必要なエネルギーを与えてくれます。しかし、生活の安定が失われると、「朝食」「昼食」「夕食」という日常の言葉は意味を失います。路上生活者や失業者は、朝ごはんを通勤前に急いで食べたり、昼食を同僚と楽しむことや大事な人とテーブルを囲んで晩ご飯を食べることもありません。食事というものは、呼び方や食べる時間に関係なく、体だけではなく心にとっても必要不可欠な栄養源なのです。
「生活を続けるために食事を摂るゲストたちにとって「朝食」や「昼食」という定義はありません」
ロンドンの生活困窮者たちのために炊き出しを実施しているAmerican International Church運営のThe Soup Kitchenで料理長を務めるLauren Everetが話してくれました。「彼らの多くにとって、久しぶりにありつける食事が『朝食』となるのです。」
1986年に設立されたThe Soup Kitchenは賑やかなロンドン市内のトッテナム・コート・ロードにあり、週6日温かい食事と

憩いの場を提供しています。新型コロナウイルスによるロックダウンが発令されてから街中の多くの慈善団体が閉鎖を強いられています。The Soup Kitchenに食事を求めて

集まる人の数は激増していますが、十分な食料や寄付金が届いていません。今は食事をテイクアウトのみで提供。スクランブルエッグと具沢山のスープやチリコンカルネ、と1つの袋にまとめた朝食と昼食を提供しています。


ソーシャルディスタンス(社会的距離)を保つ必要があるため、The Soup Kitchenはコミュニティセンターを一時的に閉鎖せざるを得なくなりました。常連の一人によると「The Soup Kitchenに行くと食事だけではなく、皆で笑い合って世間話を聞いて元気をもらうことができる」とのこと。
Everetは利用者のために安全な場所を提供できなくなってしまいましたが、料理に込める愛情は増すばかりです。南アフリカで育った彼女は、子供のころマレーシア人の母が家族のためにチキンカレーを作るのをよく手伝っていました。人のために料理を作ることが愛情表現である環境で育った彼女は、料理の道を選びました。1月にThe Soup Kitchenに来る前は、12年間高級ヨットの専任シェフとして働いていました。

「私たちの最善を尽くした食事は、客層に関係なく誰でも味わう権利があります」


「私は人のために料理をすることに喜びとやりがいを感じます」とEveretは語ってくれました。料理を提供する相手がたとえ裕福でもホームレスでも、彼女の理念は変わりません。「自分も食べたいと思うような食事を作り続けています。自分の行動は相手を敬う気持ちの表れです。私たちの最善を尽くした食事は、客層に関係なく誰でも味わう権利があります」
Everetが作る食事は、一般的な炊き出しで見るものとは異なります。長年Noma等の高級レストランやヨットのパーソナルシェフとして働いた経験を活かしながら、フードロスを削減する非営利団体「City Harvest」から届く高品質な材料を調理しています。最近、利用者の間で特に好評だった献立は、ステーキロールとハッシュドポテトにサラダとスパイシーチキンを合わせたものでした。
31歳のEveretは、「一品だけ作るのは避けたい。パスタやチキンナゲットだけ、と一色の食事でもいいのかもしれませんが、私はやるならとことんやりたい」と言います。

「私が知っている人たちがお腹を空かせていることが許せない。なぜなら、それは自分の力不足によるものだからです」



料理は愛情と考えるEveretにとって、空腹とは悲しみを意味するもの。The Soup Kitchenの利用者にとっても、「食べ物」とは「愛・生命力・生存・楽しみ」であり、「空腹」は「不安・鬱・苦しみ」を連想させる言葉です。「今の世の中で飢餓が起きてしまうのはおかしい」とEveretは語る。「私が知っている人たちがお腹を空かせていることが許せない。なぜなら、それは自分の力不足によるものだからです」
Everet自身、人のための料理で大忙しのため、ゆっくり食事を摂ることがほとんどありません。彼女にって「朝食」「昼食」「夕食」とはまた違った意味を持ちます。「ランチや朝食にでかける、というのは自分にとって休息の時間ですが、休んで座ってゆっくり食べることはない。料理人とはいつもステンレスのボールからつまみ食いをするものです」
Everetにとって、ゆっくり昼食をとれるのは贅沢だということですが、The Soup Kitchenの利用者にとって彼女の料理は命綱であります。