Farm

格別な桃の贈り物

青山ファーマーズマーケットの田中亘
の夏は桃から始まる。
Words by
Wataru Tanaka


Images by
Yusuke Tanaka
& Wataru Tanaka
食べ物で季節の訪れを感じることがある。僕にとって、夏の訪れを感じるのは桃だ。毎年桃を水で洗って丸かじりするとき「今年もこの季節が来たんだ」と感じる。だから、できることならその年最初の桃は美味しくスタートしたい。

2019年7月。僕の桃初めに決めたのは山梨・小野桃園さん。小野さんの父の代から桃畑がはじまり、今では約20種もの桃を育てる。6月末から7月頭から収穫がはじまり、周りの桃農家さんが作業を終えきっている9月中頃まで、毎年桃の収穫作業に専念している。そんな小野桃園さんとは、昨年の春に畑での桃の花見に誘っていただき、家族ぐるみでの親交もあり、夏には約20人参加した桃狩りツアーを実施させてもらったこともあって、個人的にも一番お世話になっている桃農家さんだ。

今回の桃は家族への贈答用の桃であることと、予算を伝えて注文すると「特別なものでご用意します!」とだけ返信をくれた。そして、楽しみに待って到着したのは、立派な木箱に詰められた桃。箱を開けると共に完熟した桃のよい香り。中には日川白鳳、加納岩白桃、夢しずくの3種類の桃が並んでいた。品種ごとの特徴を手書きのメッセージも合わせて添えてくれており、まさに特別なものだった。
 木箱で届けられた特別なももです。

桃の親である木と、
子の桃

早速、小野さんにお礼のメッセージを送ると「木箱は家の桃の老木を使用してます。 富士吉田の職人さんの技。釘など金属を一切使わず、代わりに竹を使用して作られたものです。 桃の親である木と、子の桃を一緒にお届けさせていただきました!」と返信があった。一箱の桃に、こんなにストーリーが詰まっていたのか!と知り、更に嬉しくなった。

そんなストーリーを聞いたら、いてもたってもいられなくなり、一度冷蔵庫にしまった木箱を再び取り出して、木の質感や香りを確かめてみたくなった。木箱の蓋を開けると、桃から溢れるさくらんぼと桃の香りを凝縮させたような甘い香りが染み込んでいる。あまりにも良い香りだったため、何度も嗅いでしまい、再びその感動を小野さんに伝えた。

箱の蓋までも、桃の木で作らています。

香りは 桃の木にしか
ない特徴

すると小野さんは「それは染み付いた桃の香りでなく、実は桃の木そのものからの香りが出ているんです」と教えてくれた。実際、職人さんも、香りは桃の木にしかない特徴だと言っているそうで、木箱は2- 3年前に納品したものでも桃の香りがすると言う。全く予想もしていなかった事実を知り、一箱の桃が特別を超えて「格別な贈り物」となった瞬間だった。




小野桃園
果実生産に適した自然環境下の、山梨県山梨市において約60年来、およそ20種の桃・光桃(ネクタリン)を生産する果樹園。Farmer’s Marketにも年に数回出店している。
Produced by Media Surf Communications Inc.