トウモロコシの再発見

ニュージーランド
出身のSusie Kriebleが再発見したトウモロコシの魅力。


Words by
Susie Krieble
Image by Claudio Rincon
コーンにはマヨネーズを大量につけて食べるのが最高だと常々思っていた……日本に移住するまでは。コーン、つまり日本で言うトウモロコシが最も美味しくなる夏の時期に出会った、クリスピーなトウモロコシコロッケ、冷たいトウモロコシのポタージュや、塩の効いた天麩羅、そして王道の醤油で味付けした焼きトウモロコシは、その魅力を再発見させてくれた。

だけど正直、トウモロコシを生で食べるという発想はこれまで無かった。これは私が長野で会った2人の農家であるMomoG Farmの中山智文、Gomi Farmの五味航の入れ知恵だ。生で食べる時は、収穫されてから3日以内でないと「トウモロコシが本来持っている味を楽しめない」と五味は言う。

トウモロコシの起源はおおよそ7,000年前に遡り、16世紀にポルトガル経由で日本の南部へ渡ってきた、というのが通説だ。当時のトウモロコシはバラエティに欠け、動物のエサとして使われることがほとんどで、味だってお世辞にも素晴らしいと言えるものではなかった。大ぶりで甘いアメリカン·コーンが普及し始めたのは明治時代に入ってからだ。

まず北海道に紹介されたアメリカン·コーンは、寒冷で米が育ちづらいという地域性も相まったのか非常に重宝され、エサではない、きちんとした食料としての地位を確立していった。そんなアメリカンコーンを育てる傍で、北海道ではより自信をもって「ご当地」と呼べるような品種も開拓されていった。実が八列に並んだ「八行トウモロコシ」がそれだ。一般的にトウモロコシは実が16列に並ぶが、この品種は8列となっている(列は必ず偶数になる)。非常に香ばしいトウモロコシの薫りがあり、味は他の品種ほど強烈に甘くないのが特徴だ。実際にトウモロコシ生産量の40%以上を担っているのは北海道である。

大正の始まりから昭和の終わりにかけては、より大きくて、甘く、簡単に育つトウモロコシが台頭してくる。名前も洒落たトウモロコシ、たとえば「サニーチョコレート」や「ルーシー90」は北海道から上陸、南下して日本に広まり、八行トウモロコシはそういった「より甘い選択肢」が現れたことにより駆逐されてしまう。

トウモロコシは大きくて見栄えもいい方が流通上好まれることに加え、多くの農業では生産性を求め効率的に栽培を回そうとするので、結果多くの農薬や化学肥料が使われることになる。

「日本では、虫を寄せ付けないように、大きく見栄えよく育つように、農薬と化学肥料を沢山使って育てることが多いんですよね」と中山は言う。

しかし中山と五味は、そんな潮流を変えようとしている。五味の農園は海抜1,000mの山間に位置していて、そこでは昼と夜の温度差がトウモロコシを格段に甘くしてくれるそうだ。「土壌の改善でトウモロコシの質も上がるから、残り物の野菜でコンポストを作って活用しています」。時たま最小限に活用する「生物農薬」という天然殺虫剤で育つ。

中山は「自然が本来備えているルールのもと」でトウモロコシを育てることにこだわっていて、農薬や人口肥料は使わない。代わりに彼が信頼を置くのは、「ミミズなどの虫や微生物がお互いを分解し、自然にバランスを保っているエコシステム」の力だ。

二人とも、買い手に対して「大きいから必ずしも甘いとは限らない」ということを啓蒙しているそうだ。五味は、彼のトウモロコシを食べた人が見せる驚いた表情がたまらなく好きらしい。小ぶりでも甘い。

農業人口の高齢化もまた、彼らの課題だという。実際、昨今の日本ではいわゆる「Iターン」として、若い世代が都心部を離れ、出身地とは別の地方に移り住む動きも見受けられる。彼らは若くてエネルギーがあり、環境への関心も高い。彼らは果たしてオーガニックトウモロコシを活性化し、八行のように貴重な伝統品種をよみがえらせ、消費者の「完璧な」トウモロコシに対する意識を変えることはできるのか。少なくとも私は、一個人としてありったけの支援をしていきたいと思う。マヨネーズを引き立てる最高の器のために……失礼、オーガニックで美味しいトウモロコシのために。